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4章 キャリア論のノイズ


4-2. 「脱・会社論」が賑やかなわけは?

「会社で働く」ということに意義がある、というのはアタマでわかっていても、何かピンとこない。
そういう人はたしかに、多いと思います。ここで、議論を整理しておきましょう。
まず、「会社に頼らず働く」というための環境は整って来ています。その理由の多くはネットにある。僕も、自分のホームページがあれば事務所も秘書も必要ない。その恩恵はよくわかってます。
ただし、それが「優れた働き方」で「これからの生き方」かというと、そうとは限らない。
キャリアの専門家の間ではごくごく当然の意見が多い。組織で属するか、一人で働くか。あるいは、大組織かベンチャーか、というのは「どちらがいい」という問題ではない、という考えです。
つまり、本人の能力適性と価値観によって決めればいいわけですよね。これは、常識的な発想でしょう。
ところが、学生と話していると「脱・会社」の方が大きな流れだと感じている人が多い。その原因を探ると、やはり情報接触に原因があります。
こうした議論の多くはネットからの情報に依拠してます。そして、ソーシャルメディアなどを経由していることが多いようです。
これからも気をつけてほしいのですが、皆さんが見ているネット上の「常識」は、必ずしも常識的とは限りません。
議論によっては、かなりバランスを欠いてます。働き方に関する議論、というか「ノイズ」は、その最たるものでしょう。
その理由をつかまないと、いつまで経ってもノイズに悩まされます。
まず、ネット上では誰もが情報を発信できます。一方で受け手の数は増えないので、発信側の過当競争になる。
そうした状況では「新奇な意見」がもてはやされます。新奇というより、もはや珍奇と言ったものも多い。
しかしメディアの編集者は、そうした意見を取り上げます。その方が、短期的には注目されるからです。
ここでも「量の原理」が働きます。
一方で、ネット上で「脱・会社」を叫ぶ人の特性をよく観察してください。組織で働く人よりも、組織を離れている人が多いはずです。
それは、そうです。会社に勤めている人には、多くのルールが課せられます。ネット上で意見を自由に述べられるとは限らない。
そもそも、目の前の仕事で一所懸命な人たちが「会社勤めは古い」と言われて、いちいち反論するほどヒマではない。
一方で、自分の仕事に自信を持っていれば、「会社勤めはダメ」のように、他者の生き方、をことさらに卑下する訳がありません
仕事ができる人は、自分の仕事を黙々と、淡々とこなしていきます。その上で、政治の仕組みがおかしいと思ったり、競合のやり方がアンフェアだと考える時には声をあげます。
ただし、他人の働き方をああだこうだと論じて、「これが21世紀の働き方」と安易なタイトルをつけるような情報は、大したものではないと思いますね。
ただ、そうしたノイズは一過性の注目を得るのです。
賢い学生であれば、その裏にある「困った人たち」の存在をきちんと感じているようですけどね。
「脱・会社」論のからくりは見えましたか?

「会社は古い」という情報は、たしかに注目を浴びやすい。だからと言って、自分のキャリアまで振り回されるのは全くの損。
( 2012年11月13日 )

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就職を控えた学生が「就活前」に知ってほしいことや、考えておくべきことを書いていきます。読みながら気持ちの準備を進めてもらいやすいように、毎日少しずつ。溢れる情報の中で迷ってしまった時に、立ち返ってこられるようなサイトにしたいと思います。
著者紹介
山本直人 やまもと なおと
1964(昭和39)年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。博報堂に入社。2004年退社、独立。現在マーケティングおよび人材育成のコンサルタント、青山学院大学経営学部マーケティング学科講師。著書に『電通とリクルート』など。