ウェブ・ブックレット
就活セットアップ
ウェブ・ブックレット
就活セットアップ

4章 キャリア論のノイズ


4-3. 「おカネが欲しい」は古いのか

就職活動をしている学生が、あまりたずね来ないけど、実は重要なことがあります。それは「おカネ」の話です。
どんなことでも、「本音と建前」というのは、多かれ少なかれありますが、就活というのはとりあえず建前が幅を利かせる世界です。
その一方で、皆が気にしているのが給料、つまりおカネの話です。検索窓に企業名入れてスペースキーを押せばわかります。「○○○ 年収」で検索している人は、たくさんいる。
そして入社一年目から高給を払う、というニュースはあっという間に話題になります。
ところが、学生からあまりおカネの話は聞きません。でも、何度か会っているというこう言う学生は結構います。
「やっぱ、給料のいい会社に行きたいと思うんです…」
思うんです、と言ってもう少し何か言いたげです。ただ、ちょっと恥ずかしそうにしている。そして、こんなことも言います。
「それって、変かなとも思うんですが、もらえるなら多い方がいいですよね」
いや、ちっとも変じゃないよ。僕はそう言います。自由になるおカネが多いことは、自分の未来の行動に多くの可能性が生まれるということです。
ただし、そういうことはたしかに言いにくい。この十年くらいの間に「おカネが欲しい」ということは、どんどん恥ずかしいことになっているようにも思います。
僕は、そういう環境は誰にとっても良くないと思ってます。いわゆるバブル期以降の30年余りの間、日本ではおカネに関して極端な議論ばかりが目立っているように感じるのです。
「カネで買えないモノはない」という言葉を聞いて心地よく思う人はいないでしょう。ただし「カネなんかいらない」ということばも、それ以上に胡散臭いように感じます。
まあ「カネがすべて」という人は、わかりやすい分、まだ罪が軽いように思います。そもそも、そんな極端な発想に共感できるほど単純な人も少数派でしょう。
一方で、「カネなんかいらない」というのは、正しいように聞こえるだけにややこしいと思います。
本人が勝手に清貧に暮らすのはいいのだけれど、こういう人はことさらに世の中を「拝金主義」などと言って批判します。経済成長はもういい、などともいいます。
バブリーな人はたしかに「しょうもない」と思うようなところも多いけれど、あまり理屈を言いません。
どうやら「カネなんかいらない」と言いたい人は、他人にもその生き方を勧めたいようです。
これから、社会に出ようという学生にとって、これは典型的な悪いノイズだと僕は思ってます。
おカネは、努力した対価として支払われるものです。おカネを否定すれば、どこかで努力も否定される。不正をおこなうような「カネの亡者」は時折現れますが、そんな姿を目指しているわけではないでしょう。
だから「給料のいい会社に行きたい」というのは、立派な動機だと思います。たとえ、それが面接で話すことではないにしても、心の中で思っている分には、まったく普通だと思う。
そう思っている自分が、変なのか?と気になる人は安心してください。

おカネは努力と成果に対して払われるもの。待遇のいい会社を目指すことも、一つの立派な動機づけ。
( 2012年11月14日 )

前後の記事

就活セットアップとは?
就職を控えた学生が「就活前」に知ってほしいことや、考えておくべきことを書いていきます。読みながら気持ちの準備を進めてもらいやすいように、毎日少しずつ。溢れる情報の中で迷ってしまった時に、立ち返ってこられるようなサイトにしたいと思います。
著者紹介
山本直人 やまもと なおと
1964(昭和39)年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。博報堂に入社。2004年退社、独立。現在マーケティングおよび人材育成のコンサルタント、青山学院大学経営学部マーケティング学科講師。著書に『電通とリクルート』など。