ウェブ・ブックレット
就活セットアップ
ウェブ・ブックレット
就活セットアップ

4章 キャリア論のノイズ


4-4. 売られた夢は買わない

「夢を持て」
そういう大人は多いですよね。
自分も子どもの頃に、校長から言われたような気もします。ただし、特に覚えているほど印象的ではない。似たようなことは、よく言われてたんだと思います。
まあ、子どもに言うのはいいんだけど、大学生や新入社員に言うのはどうなんだろな、と最近感じることが多いんですね。
だいたい世の中の仕組みなどが見えて来たら、どんな夢を持つかは自分で考えるわけです。その上、将来への見通しが立ちにくい社会になっている。
「夢を持て」と若者に言う前に、夢を持てる社会にすることが大人の仕事じゃないか。僕は、そう思うので「夢を持て」とは言いません。
しかし、日本では実に夢が安易に売られてきたと思います。
「いまのあなたは、本当の姿じゃない」「もっと、あなたは評価されるはずだ」「夢はきっとかなう」
そういうメッセージはどこかで見たことがあると思います。
その一つは、本などから発せられています。著者は大体において、何かの分野で成功した人が多い。ビジネスだったり、アートだったり、スポーツだったりします。
こういう本を読んで「自分もできるんだ」と思う人もいるでしょう。ただし、「でも自分とは違うよな」ということもわかる。誰もがイチローや本田圭祐になれるわけでもない。
そういうメッセージは、大体自分なりに咀嚼されるわけです。
さて、そのような本以外に「夢」を売ってきたのは誰でしょうか。
それは、就転職支援ビジネスをしている会社です。いま、学生の皆さんが見ているナビサイトなどを運営している会社です。
就転職ビジネスの会社は、かなりの広告費を使って、若い人たちに「キャリアアップ」を勧めてきました。
そもそもキャリアアップという言葉が和製英語です、キャリアにアップもダウンもありません。
しかし、何十年もかかって変な常識が定着したように思います。
多くの人が、知らないうちに自分のキャリアについて焦っているように見えます。若い人だけではないでしょう。フェイスブックを開ければ僕に対しても転職を勧める広告が出てきますから。
ただし、就転職支援ビジネスの仕組みをもう一度よく理解おいてください。
このビジネスは、「どれだけの人が転職したか」で収益が決まります。転職が決まれば採用した企業から報酬が支払われます。
転職という行動が多いほど、収益が上がるのです。
これは以前に書いたことと同じです。新卒のナビサイトでも、エントリーなどの数が多い方が評価されます。
こうした仕組みがあるから、「もっといいキャリアがあるぞ」というメッセージが山ほど出てくる。
そうした広告を無意識のうちに見ていれば、根拠もなく焦ってしまうのです。
いま就活を前にして、皆さんは情報の波を浴びているでしょう。そして、将来にわたっても、その量が減ることはないと思います。
ただし、冷静に考えてください。広告に書かれているものは、あくまでも「売られた夢」なのです。そういうもの買う必要はない。
将来のキャリアについては、まだ漠然としても構わないのです。この辺りのバランス感覚については、次回にお話します。

キャリアをめぐるビジネスは、広告を通じてたくさんの夢を見せている。就転職ビジネスの仕組みは、よく理解しておくこと。
( 2012年11月15日 )

前後の記事

就活セットアップとは?
就職を控えた学生が「就活前」に知ってほしいことや、考えておくべきことを書いていきます。読みながら気持ちの準備を進めてもらいやすいように、毎日少しずつ。溢れる情報の中で迷ってしまった時に、立ち返ってこられるようなサイトにしたいと思います。
著者紹介
山本直人 やまもと なおと
1964(昭和39)年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。博報堂に入社。2004年退社、独立。現在マーケティングおよび人材育成のコンサルタント、青山学院大学経営学部マーケティング学科講師。著書に『電通とリクルート』など。