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4章 キャリア論のノイズ


4-5. まだビジョンなんて要らない

「バズワード(buzz word)」という言葉があります。buzzというのは、虫がブンブンいうような音のこと。つまり、バズワードというのは、「何だか最近よく聞くけど、何?」というような流行の言葉です。
特にウェブの世界では、こうした言葉が飛び交います。その多くは一過性なので、まさにノイズだと言えるでしょう。
これは、就職活動の時にも結構多いように感じます。その中で、最近気になるのが「ビジョン」という言葉です。
そもそも、ビジョンという言葉はバズワードではありません。ただ、学生の多くはよくわからないまま「ビジョンを考えなきゃ」という感じになっている。
だから「まだビジョンがしっかりしてなくて」という、不安そうな声を聞きます。
結論から言うと、無理やりビジョンを捻りださなくてもいいと思います。では、どうしてそう考えるのか?そもそもの意味を確認しながら話をしましょう。
ビジョンは、vison。つまりvisualなどと同じ流れの言葉すから「見える」ということを指しています。
じゃあ、就活などの時に考える「ビジョン」というのは何かというと、ピッタリの日本語はたしかにありません。
大概のバズワードは、こうした特徴がある。何となく知っている英語で、対応する日本語がないとよく分からないまま広がるのです。
まあ、あえて言えば「見通し」が一番近いでしょう。ただし、企業のホームページに「我が社のビジョン」はあっても、「我が社の見通し」はありません。それでは、何だから決算の見通しのようになってしまいます。
ところが、この「見える」ということがビジョンの本質です。
僕は、幾つかの企業のビジョンを作る仕事をしたこともあります。もちろん言葉で作るのですが、売り上げや収益の見通しがない企業で、ビジョンを作ることはできません。
そういう見通し無しで「ビジョン」を掲げる会社もありますが、そういうのはよく言えば信念、悪く言えば思い込みです。本来の意味とは違うのです。
そう考えると、就職活動を始めたばかりでビジョンを考えることには無理があります。
なぜなら、いま皆さんは山のふもとにいるような状態だからです。そして就職活動を手探りで始めて山に登っていく。その途中で、段々と見通しが見えてくるわけです。

ふもとにいるのに、何かが見通せるわけがありません。また、いくら歳をとっても「ここが頂点」というようにして、下界をすべて見通せることもない。
さらにどんなに高いところに登っても、霧が出たら何も見通せないように、環境が悪化すれば経営者だってビジョンは持てません。
もし、ビジョンを尋ねられたら。それは将来への「現時点での抱負」くらいのつもりで答えればいいと思います。
見えるはずのないビジョンを求めてアタマを使いすぎたりして不安になることはありません。
ちなみに、visionをという言葉を英和辞書で引くと「幻覚」「幻影」と意味があることもわかります。
自分なりに「見通せた」と思ったら、それは当面のビジョンでしょう。ただし、それも修正をしながら考えていくものです。
あまり幻影に振り回されずに、自分のしてみたいことを、一歩一歩進めていくイメージを持ってください。

ビジョンは「見通し」。だから就活を始めた頃にビジョンを持つこと自体が難しい。それでも、段々と見えてくるのだから、いま焦ることはない。
( 2012年11月16日 )

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就職を控えた学生が「就活前」に知ってほしいことや、考えておくべきことを書いていきます。読みながら気持ちの準備を進めてもらいやすいように、毎日少しずつ。溢れる情報の中で迷ってしまった時に、立ち返ってこられるようなサイトにしたいと思います。
著者紹介
山本直人 やまもと なおと
1964(昭和39)年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。博報堂に入社。2004年退社、独立。現在マーケティングおよび人材育成のコンサルタント、青山学院大学経営学部マーケティング学科講師。著書に『電通とリクルート』など。