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5章 採る側の立場で考える


5-2. なぜ「コミュニケーション力」なのか

企業が学生を採用するときに求めるのは「コミュニケーション力」。こういう話は聞いたことがあると思います。
これは別に都市伝説でもなんでもなくて、経団連が実施している調査データなんですね。
「選考時に重視する要素」というのを企業にアンケートをしていて、その1位が「コミュニケーション力」なんです。2003年より9年連続ということです。
この調査は、24項目から5つを挙げて回答するのですが、82.6%が挙げています。
ちなみに2位は「主体性」で60.3%、3位は「チャレンジ精神」で、54.5%になっています。
では、どうして企業はここまでコミュニケーション力を求めるのか?いろいろな説明があると思いますが、僕は「会社が村から街に変わったから」と説明します。
いわゆる「昭和の会社」では、多くの人はずっと同じ会社で働いてました。また業界ごとに団体があり、官庁の規制もあった。
日本の職場の多くは村社会だったのです。お互いを長いこと知っている人同士では、あまりコミュニケーション力は問題になりません。
これを日本の文化的特徴であると論じる人もいます「以心伝心」とか「あうんの呼吸」という言葉を聞いたこともあるでしょう。
そうした中で、本当にオープンな競争は行われませんでした。そして、90年代になって段々とグローバル化が進み、かつ規制も緩和されます。
そして、企業の合従連衡が進む一方で、新しい事業に乗り出したり、グローバルに活動が広がる。
のどかだった里山の村に、一気にいろんな人が入り込んできたような状況になったのです。
そうなると、「なぜそうしたいのか」「そのことで何が得られるか」、さらには「どんなリスクがあるか」をキチンと説明する必要があります。
「説明責任」という言葉は、かつてはなかった。プレゼンテーションというのは、広告など一部の業界の用語だった。つまりコミュニケーション力よりは協調性や責任感が重視されたのです。
いま多くの企業がコミュニケーション力を求める背景はわかったと思います。そして、会社の悩みはなんだと思いますか?
若手にコミュニケーション力がないことでしょうか?
違うと思います。いま多くの会社では、ベテラン社員のコミュニケーション力が不足していることに悩んでいます。
場合によっては、役員などにも同じことが言えます。いくら社内の地位が高くても、村社会で育ってきた人は、未知の人とのコミュニケーション力はかなり低いことが多いのです。
「選考時に重視する要素」というのは、実は「いま社員に求める要素」と読み替えてもいいのです。
もっと言えばコミュニケーション力は、日本人全体の問題とも言えるでしょう。だから採用する側の人事だって、学生とのコミュニケーションについて試行錯誤しているのです。
ところが、コミュニケーション力については、いろいろと誤解も多いようで、これが学生の混乱にもなっています。これについては次回で書きます。

日本の企業社会が「村」から「街」になったことが「コミュニケーション力」重視の原因。そして、社内にもコミュニケーション力に問題のある人が多い
( 2012年11月20日 )

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就職を控えた学生が「就活前」に知ってほしいことや、考えておくべきことを書いていきます。読みながら気持ちの準備を進めてもらいやすいように、毎日少しずつ。溢れる情報の中で迷ってしまった時に、立ち返ってこられるようなサイトにしたいと思います。
著者紹介
山本直人 やまもと なおと
1964(昭和39)年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。博報堂に入社。2004年退社、独立。現在マーケティングおよび人材育成のコンサルタント、青山学院大学経営学部マーケティング学科講師。著書に『電通とリクルート』など。